午後起きからのAI社会
昔、編集という人たちは皆優しかった
その午後生活に最初憧れたのは昔、中高生の頃に見学した少年ジャンプ編集部だろうか、当時はDr.スランプやキン肉マン、ひばりくんなど大ヒット作だらけだったのだが、松井さんという編集者と、いまは白泉社の偉い人になった鳥嶋さん、ゆでたまごのよく出るほうの人じゃないほうの人の3人は集英社執筆室や応接でえらくやさしくしてくれたことを覚えている。ジャンプは結構な編集者が午後出社だったので、(実際は原稿を取りに行くからフレキシブルだったのだろうが)編集というのは時間帯が柔軟でうらやましいものだなあ、また顧客対応についてはとんでもなくやさしいものだなあなどと子供なりに思っていたが。
午後出社の悲哀と業界の準崩壊
そのあと大人になり編集業に就職していざそれ(午後出社)が出来る立場になったときは中小企業だったんで、たしかに編集は1時台からしか来ないような世界でその環境は理想のようにありがたくはあったのだが、立場もそれにあわせて非常に弱い(弱小な会社は経営サイドにより近い部署が頂点で、編集はなぜか交通費を含むあらゆる経費が本来限られたわずかな雑誌経費で処理されてしまい、一般管理費は原価負担しているにもかかわらずほとんど使えないという権利の弱い謎構造。さらに契約社員とバイトがほとんどを構成しており、雇用が不安定。またバブル後商売が全てうまくいっており、利益最大化のために帰れない)ということを知ったのは、まあそのあとのことだ。そこから15年くらいは精一杯頑張ったが、その後心は壊れ、そのため編集という立場は事実上放棄しているが、在職していた紙の業界も(街の書店がなくなったせい+ネット移行や本離れが進んだ結果で)みるみると取次の平均返本率の限りない上昇が続き、すっかり委託ビジネスがだめになった。しかし体質は古いので、それでも出す側は紙から電子への移行が遅かった。すっかり紙をやると何をやっても赤になりやすいヨワヨワな市場になってきたので(というか、今大半の紙本の会社がやっと電子に行ってるのはその理由)、まあ電子的には続くんでしょうけれど、紙ベースのこの世界をいつ退陣しようかということばかりを考えている。
最近、編集者って優しくなくなった
そんな社会状況だからすっかり最近の編集者は優しさを失っている。優しかったのは、商売が成り立っていたからなのだな、というのは最近思うこと。仕事を失った元編集が、多くジョブチェンジをするのがゴールデン街などの水商売。
それを選ぶのやはり編集時代に俗世間とずれてきた、その生活時間帯が大きいと思う(主にバー・スナックなどは深夜営業)。
あとそれ以外の離職者は、近年オウンドメディアブームのおかげでWeb編集になる人も多いが多くがネット知識不足で頓珍漢な仕様を続け、サイトを数年で閉じていく。あとはほとんどがフリーという名前のプーである。そちらも生活時間帯の制限はない。
非雇用の人が増えたおかげで、年寄り非雇用者のやれることが増えてきた
自己主張が強く生活時間帯のアバウトなやわらかい編集業からの転職手段はそのくらいしかないと思っていたが、最近は雇用以外に、エコノミーシェアという手段が少しはやってきて、なかでもUberEats配達員というのが頭角をしめしてきた。単純労働ではあるが、ようは雇われない歩合の配達員。あとは不安定とはいえ今も副業的に収入のあるアフィリエイトもある。そういう意味では、まあ水商売以外の選択肢というのも少しとはいえ残されているので、UberEatsのシステムを理解した時に「ああ、最悪無職でも十数万は稼げるな」とある意味安心した。
最近はマスコミでもUberEats配達員がとりあげられることが増えてきて、だいたいマスコミが儲かるとかで乗っかってくるとその市場は終わりみたいなこともよく先行者から言われるが、それらの配達ジャンルは日本以外の諸外国でも定着していること、また国内でもエリアがまだ広がる余地があることを考えれば、まだ大丈夫。怖いのは需給の関係が見合って募集が終了することだけか。
いまはまだ、デリバリ需要の高い港区、品川区中心に回るとか、自転車デリバリの少ない悪天候を狙ってバイクで行くとか攻略余地があるので、うまくやっていけば今の安い給与くらいは稼ぐ事は出来るのだろう。問題はそこから先なんだよな。ネット商売全般にいえることだけど、何をやっているにしても永続性がないからね。IT業界は(あのへんの作り手の方々が頻繁に転職するということでも非永続性を示しているといえるのだが)。
AI時代に乗っかれるように生きていかなければならない
でも、近い将来AIの世界になったら人がやっていたいろんなことが永続性がなくなっていくわけで。だからそんなことは気にしてはいられないかな。いつでも市場が出来たくらいの新しいことにちゃんと乗っかれるように、準備して行くことがこれからの暮らしを左右するんだろう。
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(c)カズキヒロ /画像提供:PAKUTASO |