メルマガの刊行ペース管理がひどいのを理由に編集システムの優秀さを語る人は間違ってる
I can't believe what I'm looking at / Ed Yourdon
最近本来定期刊行、あるいは月間何通程度の予定が守れない、メールマガジンがちょっと前に問題になっているが、メルマガなんて誰も催促してはくれないわけで、せいぜいシステムからのリマインドメールがきても、それを無視してしまえばどうしょうもないものだ。俺もメールマガジンを発行したことがあるけれども、3ヶ月目には挫折している。モチベーションを高く保てない人には、絶対に続かないものだ。
それで見直されているのが、定期刊行している雑誌や書籍の編集催促システムなのだが、別にそれって優れてない。「だから編集って優秀なシステムなんだよ」という人は編集に幻想的な価値を持ちすぎだし、Web上で出版幻想みたいなのをほんとに目にし過ぎてどうなんだろうといつも思っている。
作家にとっては執筆本のために諸般調整して、催促もしてくれて、場合によってはマネジメントまでしてくれる便利屋さんも編集の形ではあるわけですが、それはあくまで、自由にされているようにみえても、経営的には、刊行されるもののコスト内で管理されているわけで、まあそんなに編集者を放置しておくコストも自在なわけではなく、だから一部の高給取り大手新卒編集者以外は編集業には非正規雇用者が多いわけです。編集はノルマをクリアしていればある程度は(作家のマネジメントの真似事くらいまでやるケースがあるほど)そういう作家サイドにとって便利なことをしていてもいいわけですが、それは会社にもメリットがあるからで、売れる作家をつないでおけるからです。
編集システムは取次ペナルティも厳然として存在していることで上手く動いていることもあるけれど、なんでもかんでも編集システムに載せれば上手く行くというわけではない。途中でも適当に出せたり、放置できるWebのシステムも別に間違っているわけではなく、議論になったことがないから熟成してないだけ。システムを作ればいいので、編集を雇うみたいな考えは、ちょっと間違っている。
メルマガには進行管理だけいればいい
編集要員をメルマガ1つに雇うなんていうのは、コスト的にも大半の場合は現実的じゃなく馬鹿馬鹿しい話。もし、どうしてもアナログな編集者の催促システムを認めるのであれば、実際のところは単にサイトに対して頭割りで、編集者ではなく、進行管理者が多数の執筆人に対して1人いればいいと思うんですよね。コストで算定してあうところで。で、電話やSkype、SNS、メールなどさまざまなメディアを介して、いわゆるアナログな手動催促もする、と。機械的催促で、そこに「気」が入ってないとネットに中傷書かれたり、原稿上がってこないわけですが、たしかに人力でなだめすかしたほうが原稿は上がるというロジックは編集にはあるかもしれない。でもですよ。
編集者がやらなきゃいけないことがあるとしたら、集稿済の原稿を、社会的なNG事項との間での調整をする作業や、口述筆記の人の適当にしゃべったものをていよくまとめチェックするとか、そういう作業。OKかNGやかの境目と、タイトルの煽り。誤字訂正。でも、本当は編集されてないコンテンツが読みたくてメルマガを読むんだと思うのです。編集は前にたっていける存在ではないし、僕は必要ないと思う。編集が普通に調整したら炎上しないしメディアとして面白みはむしろ減るかと。進行管理と記事提案だけであれば、編集じゃなくて、マネージャーだけいれば十分。
単純にメルマガの進行をよくするには、催促要員だっていらないかもしれない。
システムの改善だけでもいい。編集者いりません。予約入稿ができるようにできたり、金銭的なところのシビアなところでのアメムチをもうちょっと考えれば、皆メルマガをちゃんと書くようになるはずです。
通常、リマインドメールなどの機械のいうことは無視してもペナルティがないということが大きくて、早期入稿のインセンティブが大きかったり、ペナルティが厳しければちゃんとやる人のほうが多くなるはずです。
たとえば(予約投稿で)「早く入稿すると料率10%増」「催促を5回無視すると、自動的に廃刊して返金」 みたいな形で、早期入稿をうながすインセンティブや、ペナルティがあればいいのです(ペナルティはあまりひどいとヤル気を削いでしまうので、遅くても入稿すればペナルティ帳消しみたいなシステム等が望ましい)。
システムの変更だけで、大概の人は仕事をしますし、それだけでもサイトにも色がついてきます。
編集はアナログすぎるシステム。個人の力に頼りすぎているし、Webでは過剰に評価しすぎ
エディターなんていうオールドなものは、儲かってる時は皆がちやほやしてくれるし、企画も通りやすくなるから、どうしても「俺の編集には価値がある」みたいな天狗になりがちだが、実際のところは、たとえ頂点の成功を極めていても、せいぜい決算ベースで5-6期もたてば、別のものが会社の売上を支えたりして、経営者ベースでは以前編集者が生んだ成功なんて、特に役員でもやってなければ忘れてしまうのだから意味は別の所に持つ必要がある。それでプライドが高い傾向があるのだと思う(ホントはヒットした際に職位を上げたりで役員に食い込むことが大事な、単なるサラリーマン)。
だいたい俺だって、億ベースで仕事場にお金を入れていたときに、職位格下げ話とかあったし(億単位の入金を元に抵抗した)。みんな出勤管理とか金銭管理とか別の軸で見ているので編集なんていう定量化しづらい単位にはあまり意味が無い。編集者評価軸って、僕は本当はたとえばいままでの会社への利益総量とか、通算の打率とか、そういうので判断すべきかと思うのだがやってる会社ってほとんど聞きませんね。
脱線しましたね。それはともかくとして、Web上で浮き草稼業であるオールドメディアの出版業全般に対して一部のユーザーが「価値」を語りまくるのはどうなのよと思いますが、とにかく編集力の他者評価みたいなものに、編集は自分の実力がなくても共依存しがちなので、あまり安易に評価なさんなよ、と。編集が便宜をはかってくれるのは人付き合い以前に商売として成立してるから、ということが殆どだし、編集なんて本来必要とされるのは「企画構成進行力」と客も作家も含めて「人をひっぱる力」なので、進行力だけ評価されて編集って役にたってるじゃんなんていうWeb側の編集者評価軸自体がネタとしても終わってると思うのだ。
NHN Japanのグレーゾーンから確信的に新しい概念をはかせて、数を大きくして企業マネタイズに持ってく手法を、編集は学べばいい。彼らは「新編集」。
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編集なんかよりも、システム屋は頭を捻っている。「2chまとめが流行ってるということはいろんなまとめに需要があるはず」と、あんな盗用コンテンツの総本山的な概念をロンダリング、キュレーションという本来は美術用語であるところのものを拡大解釈した偽装的なくくりではじめて、インセンティブ還元でシステムとして回っていまでは商用スポンサーのまとめを数百万で受注し、社会的にも無視できない存在まで成長している「NAVERまとめ」なんて、最たる例だ。人にやらせるためのインセンティブはグレーにかかわらず先行して用意するなどしたが、それだけでないメリットも多数作っている。それは投稿者に対してそこが舞台だったり、使いやすかったり、自分に他の部分でもメリットがあったり、狭い範囲の人への情報を編集しやすかったり、違法からはじまって、今では公式に引っ張れる写真を提携拡大することだったり、全体では記事に見えるけれども単体の1部品1部品がリンクでたどれたり等のSEO的なシステムだったり、タグのお役立ちだったり等、いろんなことを工夫している。いまや、編集者を招いてイベントや優秀編集コンテンツのコンテストまで開催したりして、キュレーションコンテンツだったはずの「NAVERまとめ」が、誰にもできる編集のまねごとなふりまでしている。
「LINE」だって、日本の優秀なアプリサービス的な顔をしているが、資本はライブドア身売りの時に100%韓国NHNになってるし、インフラとしては「3Gデータ通信にダダのり」だし、かんじんの「チャット」と「無料通話」だって元は韓国で既にシェアを伸ばしていたカカオトークのパクリ。それらにスタンプ等の価値軸をつけて、カカオになじみのない日本に先行して普及させた。世界的な普及があるのも別に電話代をケチりたい低所得者層の多い国から流行っているということもある。いまや年間千万円単位でのお金を取れるメジャー企業アカウントを擁するマネタイズできているサービスである。
言い訳上等。あのくらいのしたたかさが求められるのだと思うし、それらの価値観の創造が編集に近い、なんて気づいている紙の編集なんて一握りなはずだ。システム企画屋のほうが、これからの編集なんだよ。いまの時代はね。